写真をデータ化したお客様からのレビュー(60代以上 やっさん様)
齢80歳を過ぎて、ようやく身辺整理に手を付けた。
いちばん大変なのは、膨大な写真類である。
その時々の気分や、思い付きで作ってきた様々な形のものが、分類も儘ならない状態で積みあがっていた。
いくら、「もう先がない」といっても、まだ捨てる気にはなれない。
さりとて、このジャングルのような、写真の山に分け入る気もしない。
結局、デジタル化するほかないというのが、最後の結論であった。
まずは、昔、盛んに撮ったスライドフィルムから、始めることにした。
スライド写真用のプロジェクターは、既に壊れて動かないので、手に取って窓に透かして見ると、半世紀も昔の世界が、走馬灯のようによみがえる。
古い写真ほど、よく覚えているものだ。
当時、カラー用スライドフィルムは、安月給の私にとっては、高価な代物だった。
1枚撮るのにも、あれこれと迷いながら、慎重に場面を選んだものである。
バチバチと片っ端から写す昨今とは、隔世の感がある。
インターネットで選んだ幾つかの業者から、カタログを取り寄せて検討してみた。
その結果、確信は持てなかったが、価格、受注システムなどを総合的に考えて節目写真館を選んだ。
写真のデジタル化は、人の手作業に大きく依存する仕事だと思う。
人件費の安い海外に持ち出すのは、ある意味では合理的である。
一方で時間は掛かるが、これは通常、急ぐ仕事ではない。
もともと、長い間、眠っていた写真である。
いまさら、急ぐ必要はない。
時間はかかっても安い方がよいと私は判断して、「ゆっくりコース」を選んた。
古い茶箱の蓋を開けると、プーンと酸っぱい匂いが鼻を衝く。
貴重なフィルムには、花びらを散らしたように、カビが生えているものがある。
もっと、早く手を付ければよかったと悔やまれる。
発送してからしばらくして、DVDが送られてきた。
テレビに写してみると、予想以上に、色がきれいである。
マウントの糊が剥がれてしまったフィルムも丁寧に移されている。
指定したグルーピングも正確であった。
フィルムの裏表の間違いもない。
発送前に危惧していた点は、すべて杞憂だった。
作業者の人柄が偲ばれるような仕事ぶりである。
これから時折、ソファーに寝そべって、テレビ画面で眺めようと思っている。